私が、拙著「予防歯科をはじめよう」「開業論」にも書いたことなんですが・・・
・・・歯医者になった理由。
それは、高校3年生の時に歯を無断で抜歯されたことがきっかけでした。
当時はインプラントなんてほとんど普及していませんでしたので、健康なとなりの歯を削ってブリッジで修復しました。
大学の時に古くなったブリッジを再度製作。
そして今年に入ってから、そのブリッジが脱離しているのをメンテナンス中に発見。
ブリッジ除去し、削ってあるところには副院長にお願いしてCEREC治療をしてもらいました。
CERECはなにしろすごい。
噛む感触が天然歯とほとんど変わらない。
それで二次齲蝕になる可能性は15年で5%程度という素晴らしい治療方法なのです。
そして、ポカンと空いた第一大臼歯(右下6)という歯の部分に今日、
「即時荷重・早期荷重インプラント」という技術。
まだ、歯科界でも一般的ではありません。
高い水準のインプラント治療です。
インプラント治療は年々進化しています。
今や自動運転の時代。
日産は手放しで運転できる自動車を作って市販します。
そんな時代です。
インプラントはどうでしょう。
私は、「インプラントは埋入してから上顎は6か月、下顎は3か月待つ、それから2次オペ」それが正しい、と思うのはもうやめにしたほうがよいと思います。
どんな気心の知れた歯科医の仲間に、この「即時荷重・早期荷重インプラント」の話をしても誰も相手にしてくれません。
自動車を手放しで運転できる時代なのに・・・
とくにこのメガジェンインプラントというものは大変素晴らしい特性をしめすインプラントです。これはもう物性や力学から勉強しないといけません。
このインプラントは従来のものと異なり、うまく埋入コントロールを行うと、たった6週間で骨と結合(オッセオインテグレーション)するのです。
もちろん条件が悪い場合は除きますが、今日の私の骨質はD4と言って、最悪の状態でした。それでも、あるテクニック(CCWといいます)を使えば、即時荷重は可能です。
既存骨、成熟側であっても、抜歯即時であっても、一定条件が揃えば(ISQ値、初期固定トルク値)その日に仮歯まで入れることができるのです。
もちろん、入れたその日からガンガンかめるという訳ではありませんが、そこに歯を創ることは十分可能です。
たとえ、その仮歯が十分に機能しなかったとしても、そこに歯が在るということが精神的に落ち着くことができます。
誰だって、前歯であろうが、奥歯であろうが、あるはずであろうところに歯が無いと言うことは、とてもつらいことなのです。それがたとえ1本でも・・・・
すぐに仮歯ができるというメリットとしては、待時期間中に隣の歯が傾斜してこないこと、そして舌感を保てるということは、歯科医サイドとしても、とても有益なのです。
つまり、患者、歯科医、両者にとって、すごくいい方法なのです。
私もこのインプラントを用いて治療をしています。
もちろん、すべての症例に仮歯を装着するわけではありませんが、これは間違いなく成功すると思った症例においては、抜歯したその日にインプラントを埋入し、仮歯まで装着する治療を学び、そして実践してきました。
ちなみに、これまでその方法を行ってきて、一度も失敗したことはありません。
ちゃんと真摯に学ぶ姿勢があって、ある程度の経験があれば、私でなくてもできる歯科医は多いと考えています。
といっても、私もこの方法にいきつき、できるようになるまで、16年の歳月が掛かりました。ええー!そんなに!じゃあ、難しいんだ!と思う人もいるかもしれません。
それは時代がそこまで進んだということもありますが、私は患者にとってより良い治療を行うという進歩について、諦めなかったからなのです。
こういった技術というのは、当然のように、途中、疑問が浮かんだり、混乱したり、大きな困難に当たりましたが、私は絶対にあきらめずに毎月のように長崎から東京に通って勉強しました。
そして古い概念に囚われなかった歯科医だけが、この「即時荷重・早期荷重への道」に進んでいくのです。
本当に素晴らしいものを手に入れるにはやはりそれなりの時間と知識・技術の習得は必要なのです。
「即時荷重・早期荷重インプラント」、それを行っている歯科医院はまだまだ少ないと聞いています。
そこで、自分のブリッジが外れたときに、決心したのです。
「よし、ここに即時荷重インプラントをしてもらおう!」と。
それを、誰にしていただくか・・・・
鶴田塾で講師としてお招きした、大阪の中山隆司先生にお願いすることにしました。
中山先生は、抜歯即時埋入インプラントで有名な林揚春先生の主宰されるFIDIというコースと、メガジェンジャパンというインプラントメーカーのインストラクター、そして開業歯科医が多く入会している「日本顎咬合学会」の理事もされている、すごい先生なのです。
なにより、私が5期も通いつめた、「早春塾」でも一緒に机を並べて受講した仲でもありますし、症例検討会で中山先生のケースは何度も見ています。
昨年開催された、メガジェンワールドシンポジウムという世界規模の学会においても、会場から割れんばかりの拍手をされるほどの、すばらしい発表をされました。
私は中山先生の技術に間違いはないことを知っているのです。
6月に先生のクリニックに伺い、治療計画を立てました。
すぐに手術をしたかったのですが、「待てよ、せっかく行うのだから、できれば多くの歯科医師の先生に私の手術されるところを見てもらうのはどうだろう」と考えたのです。
そこで、今年のインプラント学会関東甲信越大会でメガジェンジャパンの渡辺社長にお会いしたときに、この話をしたところ、「鶴田先生、せっかくだからライブオペでいきましょう」ということになったのです。
告知したところ、すぐに満席。
そして、今日全国からたくさんの先生がお見えになってライブオペを行ったという訳なのです。
私はそれ以上に勉強になったのは、いつもは歯科医師の立場ですが、今度は自分が患者になるので、その気持ちがよくわかりました。
前述したとおり、中山先生の手術のウデは間違いありません。
世界を唸らせたほどの腕前です。
それでも、前日と今日手術が始まる前まで、私は不安と緊張を隠すことはできませんでした。
そんなはずはないのですが、やはり、緊張してしまっていたのです。
プロである私でさえ、自分の体を手術されるというのは不安なものなのです。
手術開始の時間が近づくにつれ、私の心臓はバクバクと音がしてくるほど緊張してきました。
それと裏腹に、中山先生の手術は見事な手つきであっという間に終了し、私が27年間歯が無かったところに、たった1時間で歯が出来上がりました。
「痛いかも、腫れるかも」、ということが脳裏によぎりましたが、今のところ皆無です。
本当に夢のようです。
もちろん、私もインプラント治療を毎月15から20症例行っているのにですよ(笑)
先日、50歳の誕生日を迎えたわけですが、年齢と共に身体機能は落ちていきます。
身体の機能を喪失するというのは本当に嫌なものです。
しかし、今日たった1時間で私の第一大臼歯は見事に復活したのです。
つまり、私の咀嚼機能はたった1時間あまりで回復できたのです。
この感覚は新鮮でした。
気分がぱあっと明るくなりました。
それまでの憂鬱な気持ちが吹き飛んで、一瞬にしてハッピーな気分になって、鼻歌さえ出てしまうくらいに。
6週間で骨に完全にインプラント体が結合し、歯型をとるのですが(印象)、今から楽しみでなりません。
ちなみにこの方法だと2次手術はありません。
オペの次は仮歯を外していきなり、印象です!
すでに歯肉縁形態も仮歯で整っているので、二次オペ、いらないです。
らくちんです。
この経験を通じて、私は患者さんの気持ちを本当の意味で理解することができました。
手術は痛くなく、腫れなく、シンプルに、短期間に、歯を創るというが、どんなに大切なことかということを。
そして自信をもちました。
私も、この方法を使って、多くの患者さんに幸せになってもおうと。
歯科医の仲間にすら、あまり信じてもらえない、「即時荷重・早期荷重インプラント」。
この技術をもっと多くの人に知ってもらいたい。
そして、これをもっとスタンダードな歯科治療にしていきたい。
これから迎える高齢化社会。
もし、一日で歯ができたら・・・
食べるというQOLは維持できますので、この治療方法で元気な高齢者がたくさん増やすことができることを確信しています。
そして、それは急速に世界に広まっていくことでしょう。
そう、手放しできる日産の自動運転のように。
休日にもかかわず、出勤してくれた「なかやま歯科」の池内先生、山崎先生、スタッフのみなさん、ユーデンタルアートの新井達哉先生、そしてセミナーを企画していただいた、メガジェンジャパンの渡辺社長、会社のスタッフのみなさん。
手術を行ってくれた中山隆司先生。
そして、この素晴らしい技術を惜しみなく教えていただいた、林揚春先生。
ありがとうございました。心より感謝申し上げます。
医療法人 良陽会 鶴田歯科医院
理事長 鶴田博文